
門茂男著『門茂男のザ・プロレス 3 (群狼たちの真実)』は、力道山亡き後の日本プロレス(日プロ)における内部腐敗、権力闘争、そして崩壊に至るまでの過程を詳述したものである。本書のエッセンスをNotebookLMの力を借りてまとめた。
主要な焦点は、芳の里淳三、遠藤幸吉、吉村道明ら「日プロ三役」による組織の私物化と金銭的スキャンダルにある。
特に、日本プロレス・コミッション資金の不透明な流用や、ジャイアント馬場の引き止め工作に際して発生した「2万ドルの使途不明金」問題などは、組織の信頼を根本から揺るがした。
こうした放漫経営の一方で、レスラーたちの待遇改善は後回しにされ、結果としてアントニオ猪木やジャイアント馬場の離脱、ひいては日プロの消滅を招いた。
本書は、華やかなリングの裏側で進行していた、情実、嫉妬、そして裏切りに満ちた「プロレス貴族」たちの実態を浮き彫りにする。
経営陣による「コミッション資金」の私物化
日プロ崩壊の大きな要因の一つは、公共の監視機関であるべき「日本プロレス・コミッション」の資金を、日プロ経営陣が私的財産のように扱っていた点にある。
不透明な資金管理
- 資金の源泉: 日本テレビからの放映承認料(年間数千万円規模)が、コミッション名義の口座に振り込まれていた。
- 私物化の実態: 芳の里ら経営陣は、コミッション事務局の頭越しに銀行から預金通帳を回収し、自分たちの会社の金庫にしまい込んだ。この資金は、経営陣の「隠し財産」として、遊興費や不透明な使途に充てられたとされる。
- 事務局の無力化: コミッション事務局次長(当時)が予算の窮状を訴えても、芳の里や遠藤幸吉は「うちは親戚づきあいだ」と言いくるめ、資金の返還を拒み続けた。
椎名悦三郎コミッショナーの怒り
- 第四代コミッショナーの椎名悦三郎(自民党副総裁)は、日プロ幹部がコミッションの金を無断で引き出し、勝手に使っている実態を知り、「(芳の里らは)悪い男ですな」と激しい怒りを示した。
ジャイアント馬場離脱と「2000万円」の謎
全日本プロレス設立前夜、日プロ側は看板スターであるジャイアント馬場を引き止めるため、多額の現金を投入したが、その使途を巡って深刻な疑念が生じた。
日本テレビからの「支度金」
- 日本テレビは、馬場が日プロに残留することを条件に、2000万円の現金を「ミスター・ヒト(安達勝治)」を代理人として芳の里に渡した。
- この資金は本来、馬場の残留工作や選手の待遇改善に使われるべきものであった。
資金の不適切な分配
- 芳の里はこの2000万円を、自分の「ポケット」に入れただけでなく、ごく一部の親しいレスラー(大木金太郎、坂口征二、グレート小鹿、上田馬之助ら14人)にのみ「支度金」として300万円から50万円ずつ分配した。
- この事実は、分配から漏れた他のレスラーたちの猛反発を招き、組織の亀裂を決定的なものにした。
「プロレス貴族」の実態とレスラーの窮状
経営陣が潤う一方で、現場のレスラーたちは極めて低い待遇に甘んじていた。この格差が「プロレス貴族」という言葉を生んだ。
収入の格差
- 幹部クラス: 芳の里や遠藤幸吉は、コミッション資金や興行収益を背景に、四谷や銀座のバーで毎晩のように豪遊し、「プロレス貴族」と揶揄される生活を送っていた。
- 一般レスラー: 1試合あたりのファイトマネーは、若手で数千円、中堅でも数万円程度。年収1000万円を超える者はごく一部に限られていた。
豊登(とよのぼり)の失脚と金銭問題
- 力道山死後の社長であった豊登は、ギャンブル狂いによる公金横領(日プロの興行権を担保に借金)を理由に追放された。
- しかし、その裏では、芳の里や遠藤が豊登の弱みを握り、自分たちの権力を確立するために彼を「悪役」に仕立て上げて排除した側面もある。
坂口征二奪還工作と「明柔会」の乱入
日プロ末期、崩壊を食い止めるための「坂口征二残留」を巡り、暴力的な混乱が発生した。
- 明柔会の介入: 坂口の母校である明治大学柔道部OB会(明柔会)のメンバーが、坂口を日プロから引き剥がし、柔道界へ戻そう、あるいは新日本プロレスへ移籍させようと画策した。
- 後楽園ホールでの紛争: 1973年、後楽園ホールの控室付近で、明柔会メンバーが日プロ幹部を「泥棒」「卑怯な男」と罵倒し、坂口との面会を強行。この事件は、日プロの管理能力の喪失を象徴する出来事となった。
マンモス鈴木:力道山時代の悲劇
本書では、日プロの犠牲者の一人としてマンモス鈴木の事例が挙げられている。
- 体格への嫉妬: 2メートル近い身長を誇った鈴木は、当初「ポスト力道山」として期待されたが、後に台頭したジャイアント馬場に身長で抜かれたことで、日プロ内での居場所を失った。
- 改名の屈辱: 力道山の命により、名前を「マンモス鈴木」から「ゴリラ鈴木」へ、さらに「ワイルド・マンモス」へと変えさせられ、見世物的な扱いを受けるようになった。
- 末路: アメリカ遠征での失敗や、国内でのいじめに近い待遇を経て、最終的にはプロレス界から消えていった。
崩壊への必然
日本プロレスの崩壊は、単なるスター選手の離脱によるものではなく、以下の構造的な欠陥による必然の結果であった。
- 公私混同の経営: コミッション資金や放映権料を幹部の個人資産として扱う体質。
- 不公平な分配: 特定の派閥や個人に利益が集中し、現場のレスラーに還元されない仕組み。
- 情実と嫉妬の支配: 才能ある選手を育てるよりも、幹部への忠誠や利害関係が優先される組織風土。
芳の里は、日プロ崩壊後、馬場や猪木の事務所に現れては「包み金(小遣い)」をせびるなど、かつての「プロレス貴族」としての威厳を完全に失った姿を晒すこととなった。
主要な発言・引用
「コミッションという(日プロ)は昔から親戚づきあいでしょう。物価が上がりおる今日日は、でていく金でいっぱいいっぱいでしょう」(遠藤幸吉、コミッション資金の返還を拒む際の発言)
「遠藤幸吉も悪かろうが、なんたって監督者の芳の里が一番いけない。彼らに鉄槌を下すには告訴するのが一番よい。人さまの金を、それも人さまの印を無断で使っているんだから……」(椎名悦三郎コミッショナー、日プロ幹部の不正について)
「日プロというところは、一度でも(トップの)椅子に座ったら、たとえ会社が崩壊しようが、レスラーが路頭に迷おうが、自分たち(幹部)だけは死ぬまで優雅に暮らせると思い込んでいた『プロレス貴族』のたまり場だった」(著者による分析)

群狼たちの真実 (角川文庫 緑 614-3 門茂男のザ・プロレス 3) – 門 茂男

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