『「金権編集長」ザンゲ録』(文藝春秋社)は、ターザン山本がプロレスの雑誌編集者&ライター時代のブラックな金のやり取り告白

『「金権編集長」ザンゲ録』(文藝春秋社)は、ターザン山本がプロレスの雑誌編集者&ライター時代のブラックな金のやり取りを告白

『「金権編集長」ザンゲ録』(文藝春秋社)は、ターザン山本がプロレスの雑誌編集者&ライター時代のブラックな金のやり取りを告白した書物である。「お車代」は複数の団体からもらったが、いちばんもらっていたのは、因縁深いあの団体だったという。

『「金権編集長」ザンゲ録』(文藝春秋社)という書籍を、今しがた読み上げたばかりである。著者はターザン山本。新刊ではないが、検索するとレビューのブログ記事が続々出てくる。おそらく私は、それらのブログとは少し異なるニュアンスで、本書について感想を書けると思うのでここで記事にする。(文中人物敬称略)

著者はターザン山本

『「金権編集長」ザンゲ録』(文藝春秋社)のターザン山本といえば、プロレスファンなら今更紹介の必要はないだろう。

かつて『週刊プロレス』の編集長だった人物で、ライターとしても、筆名、無署名も含めると、プロレス関連の書物は数しれない。

毀誉褒貶のこれほど多いプロレス関係者もいないが、その理由を自ら暴露しているのが本書である。

それはすなわち、自分がプロレス村で、ブラックジャーナリズムとしての仕事をしてきたと自戒しているのである。

マスコミに蔓延する「よきにはからえ」の文化

みなさんは、ブラックジャーナリズムというものをご存じだろうか。

いつぞや、官房機密費から政治評論家などにお金が渡っていたことを、野中広務元官房長官が暴露したことがある。

要するに、内緒の公金を配って、マスコミやジャーナリストに、都合の悪い記事を書かせないようアメをしゃぶらせたわけである。

ジャーナリズムを標榜するマスコミやジャーナリストが、実はその取材対象からお金をもらっている。

しかも国を動かす機関から……、トンでもないことである。

こんな話まででてしまったら、今さら、それ以外のメディア、たとえばスポーツや芸能などで、そのような癒着を知ったところで、もう驚きもしないだろうう。

これをいいか悪いかと言われれば、もちろんスポーツや芸能といえども悪いに決まっている。

ただ、その場合、そこで動くお金の見返りが、具体的に約定として記されているわけではない。

具体的なお願いはしないが、「 よきにはからえ」の世界なのだ。

我が国の付け届け文化と無関係ともいえず、それゆえ、こうしたやりとりはいつまでたってもなくならない。

これはマスコミの堕落ではあるけれども、客観的に「ジャーナリスト魂を売った」とまでいえるのかどうかは一概に言えないのは歯がゆいところである。

ブラックジャーナリズムとはなんだ

一方、ブラックジャーナリズムというのは、明らかに動くお金の目的がはっきりしていることである。

初耳の人は、ぜひ知って圧しい。

たとえば、ある業界のA社とB社が争っているとしよう。

その場合、どちらかがメディアを使って叩き記事を書き、ライバル社にダメージを負わせる。

その見返りに、書かせたメディアに金を払うのがブラックジャーナリズムである。

または、メディア自体が叩く対象に直接「記事に書くぞ」と脅して、何らかの見返りを得る場合もある。

困ったことに、そのような経緯でできた叩き記事というのは、往々にして第2弾、第3弾と続けざまに出版される。

量的な攻撃によって、相手はダメージを受けるし、メディアは依頼主からさらに報酬を得られるために、続けざまに出ることが多いからだ。

いったん頼んだ方は、後ろめたいので、メディアの企画する第2弾、第3弾を断れないということも見通してのことである。

さらに救いがたいのは、実はメディアは叩いている方とも話をして、「これ以上叩かない」ことを約束して、叩き記事を描く対象会社からも利益供与を受ける。

つまり、業界のライバル関係を利用して、どちらからもよくしてもらうのが、ブラックジャーナリズムとしてのビジネスモデルなのである。

金をもらっている点で「ジャーナリスト魂を売った」行為であるし、何より、この手法はもう、裏社会のやり方そのものだろう。

つまり、ブラックジャーナリズムというのは、反社会的な言論行為といっていい。

そして、内容も、自分たちの利益のために行っているので、社会的な公益性をもった内容ではなかったり、決めつけやトバシに満ちたものであったりすることが多い。

私はその点で、「よきにはからえ」と「ブラックジャーナリズム」は、どちらもけしからんことではあるけれども、両者には線引きができるし、第一義的に撲滅すべきは後者であると考える。

SWSを表では叩いて裏で金のやり取りをしていた

さて、『「金権編集長」ザンゲ録』には、タイトルで想像がつくと思うが、ターザン山本が、プロレス団体から金をもらっていたことが告白されている。

たぶん、読者のいちばんの疑惑は、ジャイアント馬場の全日本プロレスを助けるために、メガネスーパーが作った団体、SWSの叩き記事をターザン山本が書いたのではないかということだろう。

『噂の眞相』というスキャンダル雑誌には、当時、ターザン山本はジャイアント馬場からマンションをもらったとまで書かれていた。

プロレス関連の読み物というと、マニアは目を皿のようにして何度も熟読するのはいいのだが、それを鵜呑みにする悪い癖がある。

プロレス自体が虚実ないまぜのように、読み物だってギミックやフェイクが含まれていない保証などないのにね。

それはともかく、同書によると、「マンションをもらった」事実はないが、1度だけジャイアント馬場から50万円入りの茶封筒を受け取ったと書かれている。

それをもって、「なんだ、やっぱりSWS叩きは、馬場が買収して仕組んだんじゃないか」とレビューで書いている人もいるが、これは本書の内容を正確にレビューしたものではない。

なぜなら、後に書くように、ターザン山本が証言している実態は逆だったからである。

ターザン山本は、実は全日本プロレスに限らず、新日本プロレス、UWF、FMWなど主要団体から、1回につき20万円から50万円をせしめていた。

それらは一応、「よきにはからえ」のたぐいであり、心情的にはともかく、法的に買収と認定できるかというと、それはむずかしい。

要するに、プロレス団体と当時の『週刊プロレス』編集長の間には、「お車代」などでその金額が当たり前に飛び交う関係にあったと書かれているのだ。

そして、ここが肝心なのだが、何より驚くべきことに、ターザン山本がもっとも金をもらったのは、叩いていたメガネスーパーの社長から で、その額は同書を読む限り1000万円を超えていたという。

買収というならむしろSWSの方であり、上掲の伝で言えば、まさにブラックジャーナリズムそのものだったのである。

当時、『週刊プロレス』はしつこいほど金権プロレスSWSと叩きキャンペーンを行っていたが、あるときから批判が行われなくなった。

私も当時、不思議に思った。

真相は、裏でお金をもらって記事を手控えていたのである。

これは、他の団体の「お車代」と違い、メガネスーパーの明確で具体的な要望に基づいて行われた「手心」だから、ブラックジャーナリズムの範疇にあると解せる行為である。

ただ、メガネスーパーの場合、社長の方からお金を出しているので、これだけなら、ターザン山本は、「メガネスーパーには自分からせびったわけではない」と言い訳するかもしれない。

露骨に「自分からせびった」ケースも

しかし、本書には、自分からせびったケースも書かれている。

相手は馬場元子。

そう、ジャイアント馬場夫人だ。

繰り返すが、ターザン山本は買収されたのではなく自分からせびったのだ。

なんて情けない。

天龍源一郎が「寄生虫」と唾棄するのもわかる気がする。


馬場元子は、このとき、登記上は全日本プロレスの役員ではなかったが、“女帝”といわれるだけあって、団体運営に関わっていたことは明らかである。

その人に金をせびるというのは、本人の意図や自覚がどうであれ、一度叩き記事を書いて恩を売ったのをいいことに、いつまでも金をせびり続ける裏社会的なやり方にほかならない。

ターザン山本は、「金権」という表現でくくっているが、もらった金は、少なくとも「よきにはからえ」とは異なる、ブラックジャーナリズムを疑えるものが含まれている。

「金権」程度の表現では済まない行為ということだ。

この記事を機会に、ブラックジャーナリズムという手法がマスコミ業界にはあるのだ、ということはみなさんにも知っていただければと思う。

このことに限らず、微に入り細を穿つ個人攻撃記事を書くようなスキャンダル系媒体などは、要注意である。

以上、『「金権編集長」ザンゲ録』(文藝春秋社)は、ターザン山本がプロレスの雑誌編集者&ライター時代のブラックな金のやり取りを告白、でした。

「金権編集長」ザンゲ録 (宝島SUGOI文庫) - ターザン 山本
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