昭和プロレス懐古房

『外国人レスラー最強列伝』(文藝春秋)は『新日本プロレス12の怪人』『全日本プロレス超人伝説』に続く門馬忠雄3部作

門馬忠雄の『外国人レスラー最強列伝』(文藝春秋)を読みました。本書は、東京スポーツ以来、プロレス記者50年になるの門馬忠雄氏が、『新日本プロレス12の怪人』『全日本プロレス超人伝説』に続く3部作として上梓したものです。

昭和プロレスの生き字引・門馬忠雄氏がプロレス担当になったのは1964年。

ジャイアント馬場が、グレート東郷の提示する莫大な報酬を蹴って帰国した年です。

しかし、日本プロレスには当時、桜井康雄氏が取材活動を続けており、山田隆氏も日本テレビの中継解説に入るなどしたため、門馬忠雄氏は主に国際プロレスを担当されていました。

そして、その「最強」に枚挙されたレスラーは誰かというと、以下のレスラーたちです。

鉄人ルー・テーズ……来日中、酔った男に額をピシャピシャと叩かれたとき、人格的にも世界最高のプロレスラーがとった行動とは。

神様カール・ゴッチ……東京・渋谷のリキ・スポーツパレスで開かれた「ゴッチ教室」。

噛みつき魔フレッド・ブラッシー……記者でさえ近づきたくなかったヒール(悪役)の結婚秘話。

黒い魔神ボボ・ブラジル……「真面目で誠実」とジャイアント馬場に評された男の素顔。

鉄の爪フリッツ・フォン・エリック……著者が身をもって味わったアイアン・クローの威力。

生傷男ディック・ザ・ブルーザー・アフィルス……「世界一の無法男」の意外なファッション・センス。

荒法師ジン・キニスキー……和式トイレを自分で掃除した未来のNWA世界チャンピオン。

人間発電所ブルーノ・サンマルチノ……「ニューヨークの帝王」の頭髪に隠された秘密。

狂犬ディック・マードック……「ビールを飲むためにプロレスをやっている」愛すべき天然バカ。

オランダの赤鬼ウィレム・ルスカ……世界最強は誰か? と問われたら、即座にその名前を挙げる。

人間風車ビル・ロビンソン……東スポの1面をかざった「夜の帝王」との大阪・北新地の夜。

放浪の殺し屋ジプシー・ジョー……国際プロレスの末期を支えたタフネス。

韓国の猛牛・大木金太郎……放った頭突きは5万発の元祖韓流スター。

昭和プロレス的には、もちろんすべて有名なレスラーばかりです。

オーソドックスな、プロレス書籍で取り上げられるビッグネームの中に、ウィレム・ルスカ、ジプシー・ジョー、大木金太郎が入っているのが少し独自色を出したところでしょうか。

門馬忠雄氏について、本書には書かれていない、このブログの著者だけが知っている話を書きます。

門馬忠雄氏は、山田隆氏にいわせると、山田隆氏が桜井康雄氏との社内の権力抗争に敗れて退社した時、一緒にやめたそうです。

そこで山田隆氏は「門馬には気の毒なことをした」と言っていました。

でもこんな言い方は語弊があるかもしれませんが、いちばん最後まで生き残ったことで、昭和プロレスファンタジーの仕事が一人勝ちとなりましたね。

ただまあ、ジプシー・ジョーが最強かあ、とは思いますけど。

ジプシー・ジョーがレスラーの格としては、団体の看板タイトルは1度もとったことがありませんから。

流智美氏の記事によれば、取材のときはカツ丼を「カチドン」と呼んで喜んで食べていたという話を聞くと、ちょっとイメージ的には……。

天山広吉のびっくりドンキーどころか、ファミレスで会見をして勘定になると姿を消すと言われる内藤哲也とどっこいどっこいですね。

ディック・ザ・ブルーザーが、ジャイアント馬場とのインターナショナル選手権王座決定戦で初来日した時は、新幹線の酒を全部飲んだり、試合の後、銀座に行って「オレは負けてない」と言って両脇にホステスを並べて東スポに写真を撮らせ、さらに帰る時はお土産をしこたま買って報酬を全部使い切ったというエピソードがあるのに(笑)←それもどこまで真実かはともかくとして。

アブドーラ・ザ・ブッチャーは入ってないんですね。

門馬忠雄さんならマッドドッグ・バションとか、ドン・レオ・ジョナサンとかアレックス・スミルノフあたりが入ってもいいと思うのですが、要は個人的に付き合いがあったかどうかなんですね。

かつらあり、オシャレあり

本書には、「髪が薄くなってきてからのサンマルチノはかつらで試合してた」と書かれていますが、ブルーノ・サンマルチノのかつらもまあ、今更感のある話ですね。

12チャンネルが放送していた「世界のプロレス」の時点で、すでにカッパのお皿のようなハゲを見せていたので、そうしてみるとチャンピオン時代からかつらということになります。

ジャイアント馬場と戦った時は、パイルドライバーなどはもちろんなかったですが、自分から前のめりにたおれたことはありますね。

あれでとれないのなら、当時からずいぶにしっかりしたかつらがあったんですね。

しかし試合中のとれてしまったら、まったくのコントです。

コミック系のレスラーならそれでいいかもしれませんが、ニューヨークのヒーローである、ブルーノ・サンマルチノのかつらが試合中に外れたらまずいでしょう。

そういえばキラー・コワルスキーもかつらかぶってましたね。

「ディック・ザ・ブルーザーはジャケット姿がお洒落だった」というエピソードは良かったですね。

「お洒落」と言っても、「流行を着る」という意味ではなく、マフィア映画の登場人物っぽい雰囲気を漂わせる男臭い「お洒落」ですね。

もちろん、それはディック・ザ・ブルーザー・アフィルスだからこそであって、昨今の「作られたキャラクター」のレスラーたちには無理だと思います。

昭和プロレスは楽しいですね。

以上、『外国人レスラー最強列伝』(文藝春秋)は『新日本プロレス12の怪人』『全日本プロレス超人伝説』に続く門馬忠雄3部作、でした。


外国人レスラー最強列伝 (文春新書)

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