コブラツイスト。相手の身体に自分の手足をブドウのツタのように巻きつけ締め上げる。日本名はアバラ折りという。昭和プロレスではアントニオ猪木の得意技だったが、ジャイアント馬場が使うようになってから必殺技は卍固めに切り替えている。懐古しよう。
アントニオ猪木は、コブラツイストから卍固めに必殺技を「変更」したのは、ジャイアント馬場のせいだと述べている。
必殺技は、そのレスラー特有のものなのに、ジャイアント馬場が使ったとむくれているのだ。
しかし、猫も杓子もラリアートを使うようになっても、スタン・ハンセンが、フィニッシュとしてラリアートを使い続けたように、むしろ、アントニオ猪木は、「ジャイアント馬場超え」を、コブラツイストの使い手として表現できるいいチャンスだったはずである。
つまり、ジャイアント馬場よりも説得力のあるコブラツイストをかければ、それで済んだ話だったのである。
にもかかわらず、アントニオ猪木の前向きでない言い分はどういうことか。
単純に考えれば、ジャイアント馬場のコブラツイストに勝てる自身が、少なくとも日本プロレス時代はまだなかったのだろう。
すでに、日本プロレス時代から、アントニオ猪木>ジャイアント馬場、という考えを持つ人がいて、その人々は、アントニオ猪木のほうが動きもシャープで、技のかけ方も格好いい、という根拠だったようだ。
しかし、アントニオ猪木は、大一番で、大物レスラーをコブラツイストで仕留めていない。
画像上段左端、アントニオ猪木が、ジャイアント馬場にコブラツイストをかけている。
すわっ、馬場ピンチ、と思うのは早計である。
もちろん、この光景自体が「おふざけ」なのだが、かけかたが、2人の体格差をよくあらわしている。
アントニオ猪木は、ツイストというより、ジャイアント馬場にしがみついているようにしか見えない。
ジャイアント馬場は、苦しいふりをして笑っている。
下半身は、大人と子供と言ったら大げさかもしれないが、明らかにジャイアント馬場のほうが太い。
そして、胸の広さがやはり全く違う。
アリ戦ではないが、アントニオ猪木がタックルでジャイアント馬場を倒し、上に乗っかって耳をちぎって目でもくり抜けば話は別だが、それはないのだろう。
「プロレス技を前提とするガチ」というものがあるのなら、少なくとも日本プロレス時代は、ジャイアント馬場に軍配が上がる。
いや、これは別にジャイアント馬場びいきで書いているのではない。
ユセフ・トルコの書籍でも、当時の日本プロレス関係者が、「ナチュラルには馬場」と明言している。
画像右側も、アントニオ猪木ファンにとっては、忘れられない試合だろう。
第13回ワールドリーグ戦優勝戦。
ザ・デストロイヤーに翻弄され、両者リングアウトで涙をのんだが、圧巻は、コブラツイストがことごとく外され、ときにはリング外に落とされるなど屈辱的な反撃までされていることである。
相手に技をかけられる意志がなければ、アントニオ猪木のコブラツイストは全く通用しないことが白日のもとにさらされてしまったのだ。
どういうかけ方がコブラツイストなのか
ということで、アントニオ猪木ファンには、胸糞の悪い話が続いたが、今回考えたいのは、では、コブラツイストとはどうかけたらいいのか、という話である。
結論から書くと、筆者はディック・ハットンのコブラツイストに凄みを感じる。
ディック・ハットン自体、「強い」レスラーであるがゆえに、NWA世界ヘビー級チャンピオンとしては短命だったが、下段右端のコブラツイストを見て欲しい。
斜めから巻き付いていないので、ビジュアル的にはアントニオ猪木よりも見劣りするかもしれないが、説得力はこちらの方があるのではないか。
つまり、かけられる方は下半身で踏ん張れない体勢で体を反らされている。
かける方は、逆に重心を落としていちばん力を入れやすい姿勢で相手に巻き付いている。
アントニオ猪木の、ジャイアント馬場やザ・デストロイヤーに対するかけ方とは明らかに違うのがわかるだろう。
ジャイアント馬場が、コブラツイストをかけるときも、まず自分の立ち位置を堅持した上で、相手の体を強引に押し曲げるように絡んだ。
ときには、ディック・ハットンのように、相手の腰に手を当てて締め上げていた。
実は、ジャイアント馬場のコブラツイストは、大きな体だったからかもしれないが、大変に説得力があった。
アントニオ猪木のコブラツイストが、もっとも説得力があったのが、国際軍団との1対3マッチで、小柄な寺西勇にコブラツイストをかけたときである。
プロレスファンなら、子供の頃、必ずと断言していいほど、技の掛け合いを行ったはずで、そのひとつにコブラツイストは含まれていただろう。
そのとき、どんな人にどうされたときがいちばんきつかったかを思い出せば、今回の話が、現実味のない妄想ともいいきれないことはおわかりいただけるのではないだろうか。
キングオブプロレスリング/第16弾/BT16-063/RR/コブラツイスト/柴田勝頼 –
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